【2023注目の逸材】
いしかわ・ゆいと石川維人
※プレー動画➡こちら
【所属】栃木・宇都宮ウエストキッズ
【学年】6年
【ポジション】遊撃手
【主な打順】二番
【投打】右投左打
【身長体重】148㎝39㎏
【好きなプロ野球選手】柳田悠岐(ソフトバンク)
※2023年12月8日現在
論より証拠。まずは動画をご覧いただきたい。あるいは12月9日の東京・神宮球場にて、その目でお確かめをいただきたい。
こんなにも楽しそうにフィールドに立ち、美技や巧打を連発する小学6年生もそうそういまい。石川維人はしかも、二番・遊撃手の主将として、結成5年目の宇都宮ウエストキッズを初の全国舞台までけん引してきた。その微笑みは、挫けぬチームの象徴のようでもある。
「小学生の甲子園」こと全日本学童大会出場がチームの大目標だったが、県予選準決勝敗退で涙。しかし、失意のまま終わらなかった。
9月には栃木県下125チーム参加の巨大トーナメント、夏季大会で初優勝。さらに自主対戦形式のポップアスリートカップの県予選も制し、関東最終予選も勝ち抜いて全国ファイナルトーナメント(神宮開催)出場を決めてみせた。
「夏の県大会優勝で監督を胴上げする、という新しい目標をみんなで立てて、それを達成することができたのが一番大きな自信になっていると思います」
まだ大きくはないが、立ち姿も動作も美しい。本人はプレーを見たことがないというが、その攻守は現中日監督の立浪和義氏のPL学園高(大阪)時代をも思わせる。足を引き上げてタイミングをとりつつ、手元までボールを引き寄せてシャープに打ち返す。バットをひと握り余して持ちながらも、ヘッドの走りを十分に効かせた打撃が特長だ。
「打ち方はいろいろと教えてもらったことを基本に、自分でもミートできるように考えました。意識はグリップをボールに合わせるようなイメージです」
遊撃を守っては、内外野とバッテリーに声を掛けながら、美技を披露する。ポップの関東最終予選では、一時逆転されてなお続く大ピンチで、三遊間のゴロをギリギリで好捕しての三塁転送で奪ったアウトが流れを大きく変えた。
でも何より光るのは、爽やかな笑顔。青柳俊一監督はこう語っている。
「キャプテンになって最初のうちは毎日のように泣いていました。でも、辞めることもなく、そのまま頑張ってホントに良いキャプテンになってくれました」
絶えない笑顔の向こうには、人知れずの涙と苦労もあったのだ。石川本人が当時を振り返る。
「5年生で新キャプテンになってから、ホントに毎回泣いていました。みんなが思うように動かなくて、チームがまとまらなかったりして悩んで…」
これを脱することができたのは、周囲ではなく自分を先に変えたことだという。「みんなに声を掛けるというよりも『会話』『対話』という意識に変えました。これがきっかけだったかもしれないです」
声を出して満足。意味もなく笑っていればいいという自己完結ではない。仲間やベンチとそれぞれにやるべきことと信頼を確認できたときに、背番号10は自然に相好が崩れるのだろう。
「個人の夢はプロ野球選手です。ポップアスリートの全国では、栃木と関東の代表という責任をもって、良い成績を残したいと思います」
関東最終予選ではあえて自重した指揮官の胴上げ。夏の栃木大会に続いて、冬の神宮で再びやるつもりだという。
(動画・写真・文=大久保克哉)